猫の引越し


猫の引越しは一般に難しいと言われる事が多いようです。
移動後、新居に馴染めない等、ストレスの事を言っているのだと思います。
自分も今回、初めて引越しを経験することになり不安だったのですが、
室内飼いの場合は引越しの問題というのはあまり起きないんじゃないかとも想像はしていました。
で、特別な事は何もしていないし実際必要もなかったので、ここではあまり書くことがないのですが・・

たしかに猫は移動が嫌いなのは、医者へ連れていくときの苦労に見る通りです。
私が考えたことは、極力新しいものを入れないという事でした。
猫を貰ってくるときの定説に習って彼等の匂いのついたもの。。ベッド、毛布は勿論、爪研ぎでボロボロになったダンボールや、
ウンコの残ってる状態のトイレ、等々。
新規に買う必要があった生活用品のいくつかは、やむを得ず・・という事になりましたけど、
私はこの度生まれて初めてテレビというものを買いました(持ってなかったということではないです、勿論)

また、引越しのほとんどは自分のクルマで済ませましたが、そののゴタゴタは猫にとって不安の材料になるでしょうから、
タダでさえ不安な新居でゴタゴタをさせるよりは、先にモノを移し、最後に猫を移しました。
心掛けといったらそのくらいです。

移動直後、人に手伝って貰った関係で、不安な猫達を残し、食事へ(笑)。
数時間後帰宅したときは、たしかに怯えて押し入れに引きこもっていました。
置いてあったフードにも一切手付かずです。
まなかなどはキャリーバッグの中で後ろを向いたままになってる有り様でした。
が、これはあまり気にしなくていい事と思います。
それまでに無い、匂いや物音に対して過度に警戒するのは動物として当たり前のことで、
飼い主さえいれば何処へでもおかまいなしに着いて行く犬の方がおかしい・・動物として退化しきっているのです(笑)。

と言いつつ、ちょっと可哀相でもあり、野良のぶちを家に連れてきた時のことを思い出して、押し入れの中に顔だけ突っ込んで、じい〜っとぶちを見つめていました。 予想通り、ゴロゴロいいながら彼はこちらへやって来て、ちょっとした音などに怯えて、入ったり出たりを 繰り返しながら、部屋の中を歩くようになりました。
そうなれば、他の2匹も釣られてか、安心してか、出歩き始めます。我が家の猫社会はそういう図式になってるのです(笑)。 全体におどおどしてたとはいえ、トイレと食事もクリアし、その夜は昨日と同じように、全員がベッドで寝ました。(^^)

以後数日は、帰宅すると彼等全員が押し入れに隠れていましたが、今まで通り”親がきちんと居るのだ”という事が解ると、広くなった部屋を走り回るようになり、お気に入りの場所も開拓し、以前のように玄関先まで迎えに出てくるようにもなりました。
新居は見つけるのに苦労を要したとはいえ、私にとっては妥協の産物でした。 その苦労が報われたと思ったのは、ぶちが新居を大層気に入ってくれたと確信できるものがあったからです。

ぶちの行動に変化がでました。

・玩具で遊ぶようになった。
ぶちの機嫌が向上したと最初に感じたのはこれです。 まなかを運動させるつもりで取り出す玩具ですが、それまでバカにして反応しなかったぶちの方が玩具に賢明に食らいつき、ひたすら遊ぶようになりました。

・ガキ共とケンカをするようになった。
それまで彼等とグルーミングはいつもしていましたが、篤郎がマメにケンカをしかけてくるのに対していつも ぶちはバカにして相手にしないか、逃げていました。別に篤郎が威張ってた訳ではありません。 それまで何処かでガキ共をバカにしていたぶちが正面を向き、彼等と一緒になってゲームを単純に楽しめるようになったのです。

・膝に入ってくるようになった。
野良時代はよく私のクルマに入り込んで、膝の上をベースポジションにしていたのですが、 家猫になって以来、膝にもたれ掛かる事はあっても、決して上に乗ることはありませんでした。 これは自由の世界を奪った私に対する、唯一のそして絶対に引かない小さな抵抗だろうと思っていました。

・太った。
ぶちは、常に痩せていて3匹の中では最軽量だったのですが、一気に太って最重量に到達しました。 たしかに以前より食う量が増えたし太り過ぎは問題ですが、ちょっと熊のような体型が野良時代の本来の彼のスタイルでした。

これら全ては去勢によるストレス源効果と考えた方が自然ですが、全て引越し後に起きた事なのです。 一月前の去勢によって、ぶちは本来の性格を維持したまま強引さだけが消えたのですが、 引越し後は行動面にプラスが多く出て来るようになりました。
部屋が広くなったことが直接的な原因だと思いますが、「ちゃんと親が居る」だけでなく、私が何を思って何をしたか、という事をわかってくれたんだ。。と素直に思えるのです・・・てか、そう信じているのです。
冷静に解析(笑)すると、旧居では常に「解放されたい」というイメージが定着し、場所が何処であれ、変化によってその深層が払拭された。。という事なのかもしれません。似たような事は人間の引越しにおいても言えてる気がします。

さて、親元を離れた野良時代の無い、まなかと篤郎にはそういう深遠さは期待できません(笑)。 物心ついてからの移動を初めて経験したためか、当初はかなりナーバスでした。特にまなかは、自分の得意としていた玩具の遊びを全てぶちが持っていってしまうため、不安を増長させたようでした。 プチデブだったこの2匹は逆に痩せ始めたのですが、いいダイエットの範疇であり、時間と共に新居にも馴染んでいきました。 ちなみに、まなかの慢性的な結膜炎がぴたりと止まりました。(篤郎は相変わらず・・どうも優れた遺伝子は全てまなかが持っていってしまってるような(笑))

環境の変化の中で、当初は驚きや、不安、好奇心が常に同じ方向に向い、互いの存在に安堵するという事が繰り返されるようです。 この事で、彼等の意識はひとつに固まってきたように協同歩調を取るようになりました。 ぶちはガキ共と正面を向いて付き合うようになり、3匹の関係はひとつ先に進みました。 これが引越しの最大の成果です。 飼い主との関係も大事ですが、複数飼いの中では猫同士の良好な関係はとっても重要なことですね。 (2003.12.24)

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